ぐぐーんとイラストがうまくなる本『Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図ー』の感想とよいところ

読書

本の概要

「ライオンキング」「美女と野獣」といったディズニー映像作品に携わった著者のノウハウや知見がたっぷり。
ソフトの使い方や技術的なことよりも、「画面作りの考え方」に重点を置いた本。
『Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図ー』の書評、よかったところと感想です。

この本は、イラスト方面では有名な動画で紹介されたことで、より認知度が高まったのではないでしょうか。

各方面から絶賛されていると思いますが、私も読んでみてすごくいい本だと強く感じております。

この本のとてもよいところ

単純化されていてわかりやすい

参考画像が非常にシンプルになっているので大変わかりやすい

シンプルながら、広く感じる部分は広く、ダイナミックさもバッチリわかる。
小さいサムネイル程度の大きさながら、非常にそれぞれの印象がよく伝わります。

実はそれだけでかなりすごい。

要素が個別に案内されている

画面作りに必要な要素が細かく分類されている。
これは映像方面で撮影をする人や3Dをやる人なら理解がしやすいでしょうか。

例えば3DCGだと、一つ一つの要素を個別に設定することになります。

【主な3DCGの要素・作り方】
・形はモデリングする
・表面の質感や色はテクスチャを貼る(設定する)
・ライトやカメラはそれぞれ設置する
更に細かく設定できることがたーくさんあります。
3Dのように一つずつ要素を配置するのは、最初のうちは相当苦戦するのですが…。
ひとつずつの効果を確かめながら進められるので、変化が自分の目で確かめられるメリットでもある。
 
これが2DCGやイラストになると、平面の中に全ての要素を複合したものを描くことになります。
さまざまな要素を一度に描き進めるのは、どこを改善すれば良くなるのかが分かりにくくなる面もあります。
 
そこで、この本では改めて画面に含まれる要素を個別に解説されています。
【画面の要素】
・ライン
・シェイプ
・明度
・色
・ライト
・カメラ

これらを複合しての、構図。

ひとつずつ要素を見ていくことで、自分にとっての得意なところや不得意なところが分かってくる。
これがとても大きい。

色のことは気を配っていたけれど、
明暗を意識する方面ではあまり考えていなかったかもしれない、など。
この本で気づくことは多いです。

視覚的な意図をしっかり学べる

何よりも伝えることに重点を置いている。

その画面を見て、どういった感情・印象になるか。伝わるかどうか。
赤ければ熱い青ければ冷たい。
そういった多くのイメージが当たり前のように共有されている中で使い分けていく。

特に映像は一つの画面が表示される秒数が決まっています。

数秒、あるいは一瞬の短い間で伝わらないといけない
複雑すぎても人の目は追いきれない

だからこそ、非常にわかりやすい。

幅広いコンテンツに応用が利く

この本が役に立つのはデザイナーやイラストレーターなど、グラフィックに関わる職業だけではない。

デザイン、イラスト、映像、絵やグラフィック以外でも、
この本から得られる視覚的から感情を揺さぶるための知識や発見は幅広く活用できるものです。

視覚的な情報を人間は日常的に非常に多く目にしている。
手元の資料でも、広告でも、ちょっとしたディスプレイでも、衣服でも…。
この本はそういった意味で、どんな職種の人であっても役立てられるノウハウがたくさん詰まっています。
役立てようと思えば、いくらでもアイデア次第で活用できる。

映画鑑賞や作品を楽しむ上でも「ここはこういう風に作られているんだな」とより意味深く見ることもできるようになります。

中級者がぐぐーんと伸びるきっかけになり得る本

初心者はもちろん、中級者にもとっても、とても価値のある本だと感じています。
もしかしたら、この本で知ったことをきっかけにブレイクスルーになる可能性を秘めている。

感覚的にやっていた部分を改めて気づく。
逆にあまり入ってこない部分は、まだ未収得なスキルだと自覚できるでしょう。

絵描き目線での感想

このブログを書いている人は絵も描きます。ブログ書いてる時間より長い程度には…。
毎日画像編集ソフトを開いているタイプの人種なので、ざっくりと分類して中級者とします。

この記事内での初級・中級・上級の基準ですが、仮に以下のように仮定しています。

・初心者は絵を描くこと自体に慣れてなくて、1枚描くのにもまだ大変だと感じる人
・中級者は絵を描くことに慣れてきて、少なくとも自分の絵を1枚通してスムーズにかける人
・上級者はそもそもこの本ぐらいすでに読んでいる人

映像の観点からわかりやすく伝えることに重点

秒数。
アニメーション背景などもそうですが、表示される時間というものがある。

これが他のグラフィックデザイン、印刷物などの静止物。
また何度も画面を行き来するゲームなどの分野になると、またちょっと違う観点になってくる。

絵を描いている時間は長くとも、見るのは一瞬だということを時に生産する側は忘れてしまうこともある。
いっぱい描き込みに時間かけたりしますから。

表示される時間が短いからこそ、分かりやすく伝える必要がある。
これを改めて意識することで、すっと入ってくるいい構図になるかもしれない。

シェイプを見出すのが難しい

絵の中でどの要素を得意とするか苦手とするかは人それぞれ。
特に近視眼的になると、質感や色に目がいきがちです。

この本を読んでいて私の感想としては、要素の中では特にシェイプを見出すことがあまりできていなかったと感じました。

シェイプを見つけることができれば、画面全体を見ることができたり、面白い構図を作るのに重要だったりするでしょう。

得られた知識を元に、どこまで取り入れ、または自分のスタイルを矯正するかは人それぞれ。
SNSや多くの作品や他人と比べがちなので、ついあれもいいといっぱいいっぱいになることもあるかもしれません。
趣味なのか仕事なのかで追及の幅がありますので、活かし方は自分で選択していきましょう。

イラスト教本に載ってない知識がある

イラストレーターによる「〇〇の描き方」系の教本には、
大体の場合球や箱の光の当たり方などの解説が載っており、基本は抑えてある…。

のですが、用語としていくつか入っていないものはありました。
その中には、これの名称が知りたかったというものもあったので、やはりひとまとめにしっかりと解説してある本は1冊しっかり読んでおくとよいですね。

特に光源のページ、カラーボード辺りには個人的には新鮮な情報がありました。
私が知らない範囲だっただけといえばそうです。
背景でよくある仕上げ線、あれの名称もちゃんと書いてありましたね。

まとめ:はじめて絵を組み立てるのにも、改めて問い直すのにも有効な本

・初心者にとっては、真っ白な画面に何をどう配置したらいいかを知る
・中級者にとっては、改めて自分のものの見方を問い直すことができる

私は絵描きやデザイナーの立場から、非常にこの本は役に立つなと感じました。
それ以外の職種の方でも非常に意味深く、そして難しくない内容で読み解くことができます。

視覚的な画面作りの要素は網羅されてると言っても過言ではない。
是非、知っておいても損はないとてもいい本と思います。


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