ゲームの概要
レトロな単色ながら3Dの迫力も兼ねそろえた独特の雰囲気と、
これまた一風変わった解き心地を感じられる推理ゲーム『Return of the Obra Dinn(オブラディン号の帰還)』
時は19世紀初頭。海に船が行き交う頃の歴史の物語。
東インド会社という名前には聞き覚えもあるのではないでしょうか。
行方不明になっていた商船「オブラ・ディン号」が5年の時を経て、無人となって戻ってきた。
60名の乗客と乗組員はどうなったのか? 船で何があったのか?
その損害査定のため、プレイヤーは保険調査員として死の直前を垣間見ることのできる時計を手に、船へと派遣される――。
STEAMやPlayStation4, Xbox, Nintendo Switchなど各種で配信されています。
制作者は入国審査官になって書類をさばいていく『Papers, Please(ペーパープリーズ)』というゲームを開発した方で、それを知った時に「あー確かに」と一発で納得してしまいました。
リアル歴史、国籍、写実的な顔の人物のグラフィック。一方でゲーム性や主観の部分は事務的であること…これは確かに同じ方の特色や興味が出ている。
相変わらず着眼点が面白くて私は好きです。
ここがいいなと思ったところ
独特の雰囲気・グラフィック
モノクロームで、点描画の本の挿絵のような世界。
でもこれ3Dなので歩き回ったり見渡したりできる。
レトロゲームのようだけど、そうではない。これだけで大分インパクトがあります。
また当時の船の資料としても、3Dで歩き回れるという点でなかなか価値があるのではないかと思います。
音楽が印象的
現実ではもう誰もいない船の上。音楽もなく、ただ歩んだ時のきしむ機能音が響くばかりの静かな夜。
だけど、記憶をさかのぼればとても印象的な音が耳に残ります。
各章の音楽や、正解の音ハメなど、このゲームは音もなかなか良い。
記憶を見た時の会話は各々の国の言葉であり、死に際の叫び声もリアリティある感じで聞こえるので印象深いです。
一気にやってもじっくりやっても楽しい推理
このゲームでの推理要素。
60人の船員名簿から、プレイヤーは保険の査定のために以下の3点を埋めなければならない。
2.その人物の安否、または死因
3.誰によって殺害されたか
これが3人正解すると答えが確定します。
60人も考えるのは大変と思うかもしれないけれど、ひとまとめで判明するグループもいるし、ゲームが進むと消去法で埋まっていく部分もあるので、そこまで構えなくても大丈夫。
本当にどうしようもない時は当てずっぽうで埋めるという手もありますし、
途中で船を降りてエンディングを見ることもできます。良し悪しはさておきとして。
推理の参考となる、名簿、船内地図、スケッチなどゲーム内資料は多く、
先が気になってドンドン進めるタイプの人でも、
じっくりと考えてやっていくタイプでも、
どちらも楽しめるような推理ゲームだと感じました。
酔いやすい方は設定で調節を
船のリアルな船の揺れも3Dで再現されているため、そのままの設定だと酔ってしまう人も出てくるのではないかと思います。
なのではじめる段階で設定を見ておくのをオススメします。
攻略ヒント
・このゲームはひっかけとかないので、ヒントは素直に受け取っていい
・進むほど、消去法でも埋められるようになる
・意外なものからも遡ることができる
・国籍も大きな情報。1人だけの場合は何かと特定しやすい
・ハンモック番号が大事
・靴もヒント
・もう本当にわからない!という時は、3人の答え合わせのうち、2人分を確定できそうなところ、残り1人を不確定なところであてずっぽうする手もある
ダウンロード
【Nintendo Switch版】

【STEAM版】

ネタバレ有:クリア後感想
ここからクリア後のネタバレを含む感想になってきます。
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【全体の感想】
他ではプレイできないタイプのゲームだと思います。このゲームのシステムも、雰囲気も、このゲームじゃないと味わえない。
このシステムでまた遊びたいって気持ちも正直あります。
推理ゲームである以上、初見プレイは一回限りなので、興味ある人は是非何も見ずに購入からのプレイが本当にいいと思います。
モノトーンであったり、もう誰もいない船の上でとても静かな雰囲気なんだけど、荒々しい展開もあったり静と動のバランスがなかなかうまかったですね。
あと新鮮な断末魔がたくさん聴ける。
ゲームの戦闘不能ボイスって結構賑やかというか、倒れる間際でも生命力に溢れているなという印象があるんですけど、オブラディンではまさに断末魔なので…もう引きつった感じだとかとてもそれっぽい。
【見返してみてのちょこっと疑問】
全容を知ってから一番最初を思い返してみると、もう脱出ボートがおそらく出てしまったので残った数人でそんな貝殻奪いあってもしょうがない感がすごい。
まだ脱出ボート残ってたりするんだろうか。さすがにもうあの人数では大きな船を動かすことはできないと思うので。
また、同時に一等航海士のウィリアム・ホスカットがちょっとよくわからない。
船長の友人で妻の兄という関係性としては重要な位置にありながら、最後の貝を奪う側になってたのはどうしてなのとかその辺がよくわからないところ。
貝殻の魔力を抜きにしても、船員だったら船長に疑心を抱くの理解できるところですが、彼は親密度高そうな位置なので…何故? 妻が死んだとき不在だったところで疑心が生まれたか?
でもプレイヤーは保険調査員なので!!! 物語や動機はともかくあくまで書類を作りに来たんだよ!
…っていうことにもなってしまうので。
なんだかやっぱり不思議なゲームですね!
【気に入った船員は?】
プレイしているとだんだん「この人は頑張ってたんだなぁ」「こいつこの野郎」と感想を抱くわけで。
終わる頃には気に入った人ができたりする方もいるかもしれません。
士官候補生あたりは結構3人とも頑張ったなぁと思ったりするんではないでしょうか。
私がちょっと気に入った船員はフランス野郎ことチャールズ・マイナーです。
名前を当てるゲームであるからずっとあだ名で呼ばれ続けることになるわけですが、
色んなシーンと現場に居合わせているのでしっかり働いているなと勤勉さでの好感度がまず高い。
それなのに流れ弾が当たったせいで査定がマイナスになるところが、あー書類仕事だったよこれ~シビアだなあと。そうだこれ保険の査定だったわみたいな。画面の前で渋い顔になりましたね。
上司であるアルフレッドの死に際の会話で、彼の末路や諸々わかるわけですが、
「フランス野郎はどこだ」というところも、英語だとおそらく「Where is my French man?」って言ってるんですよね。
可愛い部下だったんだなぁと上司と部下としての信頼関係が伺えてよかった。
そしてこのシーンを見る時にはすでにマバの死に様を見ているわけで…。
八つ裂きだそうなので、下手したらそれ以上というところでね。
「こんな死因使うのかよ、どういうことなの」と思っていたものの1つである身体切断インパクトよ。
でもプレイヤーとしては時計を持っていてもそのシーンを見ることはなく、これもまた想像の余地が残る部分でもある。
そういった部分も込み込みトータルで、具体的な末路が分からないわりにかなり彼に対する情報量が多く、なかなか楽しかったと言いますか…そういったところで、気に入っていたりしますね。