『カラー&ライト – リアリズムのための色彩と光の描き方』の感想とよかったところ

読書

本の概要

光と色の性質をとてもよく解説された大型本。
イラスト、動画、グラフィック、さまざまな分野で活用できる内容であり、読み物としても興味深い知識が盛りだくさんです。
また、写実的なファンタジーイラストの数々も見どころがあります。

技法やテクニックよりも、理論の理解や座学の内容になりますので、世界の仕組みを理解して自分の絵に根拠を持たせたい方に向いている本でしょうか。

この本のよいところ

ただ見ただけでは気づかないようなところもたくさん解説されている。
絵画を見た際の「なんだか説明できないけどすごい」が解説されて理解できるようになるようなよさがあります。

根拠を理解して、実践できるようになる。
メイキングとは違う、理論を知って基礎レベルが上がる本。

書かれていることを実際に観察してみて、「本当だ!」となるとよりいい。

その時その時で理解の範囲が増えていく。じっくり取り組んでいくのもいいですね。

写実的な絵での、ライティングと色の置き方がわかるようになる

現実の現象として、どのようになっているかの参考例と解説が豊富で、風景・背景などを描く人は特にとても活用できるように思えました。
参考例は写実的なテイストですが、画面は整理されて要点が抑えられています。

選択する色の幅が視覚的にわかるカラーガマッドや、
色を混ぜた結果、濁った色の泥と表現する層とそうは思わない層の議論などがとても興味深い。

個別の例がわかりやすい

例えば、植物の透明度に対して、

・光が当たり、反射する部分
・光が透ける裏側の部分
・影になった部分

それぞれどのような色合いになっているかの実例が非常にわかりやすい。

例えば、建物の陰でも下の面は青空を反射して青みがかっている。
よくよく絵画を観察すると得られる情報が数多くあることには驚かされます。

細かい部分も根拠を知れる

木々の葉っぱの間のから覗く空の色、スカイホール。
これを描くときに、どのように描けば良いのか?

・空を先に塗る?
・後から描き入れる?
・塗った後のスカイホールは空と同じ色?

そういった絵を描くときの細かい疑問に関しても多数触れられています。

この世の多くの事象に対して、いかに観察をしなければ絵として再現して描くことができないと痛感するわけですが…。

どのような風に見えるのか、何故そのような色になるのかの根拠なども含めて、ひとつひとつ解説されているので、理解しながらそれを自分の絵に取り入れていくことができる。
理解できるということは、迷わなくて済むということ。
風景の絵を描く際、ハードルの高さの一因として迷うというのがあると思います。

デジタル世代だとまた感覚が違うかもしれない

色の混ぜ方などにアナログの絵の具の例を多く取り入れているため、デジタルオンリーの世代だとまたちょっと読んでいて感覚が違うのかもしれないと思いました。

この色を混ぜて絵の具に触れること自体はあると思いますが、
色を混ぜて作る。
例えば3色から多くの色を作り出し、一方で色を絞っていくその感覚。
カラーパレットから無限の数値から選べてしまうデジタルとは違う感覚かもしれませんね。

おわりに

どちらかというと考え方や画力の底上げになるタイプの本なので、じっくり読みたい本ですね。

時々読み返しても、より理解を深められる。
あの頃は理解できなかったけど、描いて実践しているうちにだんだん理解できるようになってきた…といった発見があるんじゃないかなと。
そういう意味で長期的に手元に置いておいても価値のある本一冊だと思います。


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